頭 痛
関東脳神経外科病院の外来で一番多い症状は頭痛です。 しかし、一概に頭痛といってもその原因は様々で、致死性のものもあれば、原因がはっきりしないものまであります。 脳外科医にとって一番注意しなければならない症状は、『くも膜下出血』を疑わせる突然の激しい頭痛と、『脳腫瘍』を疑わせる徐々に強くなる頭痛です。 しかし、一般的に外来で多く見られる頭痛は、緊張型頭痛であり、これらをしっかりと識別しなければなりません。近年、画像診断の発達に伴いこれらを見分ける事は、より確実になってきていますが、やはりその頭痛の特徴をしっかり把握しておくことが大切です。
頭痛には大きく分けて2通りあります。それは、頭蓋内に何らかの疾患があって起こるものと、頭蓋外に何らかの原因があり起こるものとがあります。 その代表的なものを特徴とともにご紹介いたします。
頭蓋内疾患による頭痛
くも膜下出血
くも膜下出血の原因の約90%が脳動脈瘤の破裂です。その頭痛の特徴は、突然の激しい頭痛で嘔吐を伴い、また意識障害を伴うこともあります。くも膜下出血は致死的な疾患で、約半数位が予後不良です。また、くも膜下出血は脳動脈瘤の再破裂を起こす確率が高く、治療はまずこれを予防する脳動脈瘤クリッピング術と血管内治療のコイル塞栓術が行われます。
脳出血(脳内出血)
脳出血の原因は様々で、高血圧・動脈硬化・前述の脳動脈瘤・脳動静脈奇形・脳腫瘍などがあります。脳出血の頭痛は急性で頭蓋内の圧が亢進するもので、嘔吐・意識障害・神経症状を伴うことが多く見られます。
脳腫瘍
脳腫瘍による頭痛の多くの原因は、頭蓋内の圧が亢進することから起こります。 脳腫瘍もいろいろあり、髄膜腫に代表される良性のものから神経膠腫のような予後の悪いものもあります。脳腫瘍の頭痛で特徴的なことは、明け方に頭痛が強いことです。
急性水頭症
急性水頭症の原因も様々ですが、これは前述の脳腫瘍・くも膜下出血・脳出血に続いて二次的に起こるものがほとんどです。この頭痛はやはり、急性頭蓋内圧亢進によるもので、嘔吐・意識障害を伴うことが多く見られます。
静脈洞血栓症
静脈洞血栓症とは、頭蓋内の太い静脈(静脈洞)が血栓によって閉塞し、脳の浮腫が起こることから頭痛が起こり、意識障害・神経症状を伴います。
髄膜炎
髄膜炎は、本来頭蓋内は無菌状態であるが、そこに細菌やウィルスなどが侵入し、炎症が発生して起こります。髄膜炎の特徴は発熱を伴う頭痛で、うなじの硬直を認めることもあります。
その他
その他に、慢性硬膜下血腫、解離性脳動脈瘤の形成期などの他の疾患が多数あります。
頭蓋外疾患による頭痛
緊張型頭痛
緊張型頭痛はストレスで肩から頚部にかけての筋緊張が原因で起こる頭痛です。 この型の頭痛が最も多く、女性に多い傾向が見られます。仕事のストレスや、仕事中、日常生活の姿勢、運動不足が原因のほとんどです。また、最近では、小児においても勉強時の姿勢や、テレビゲームのやり過ぎが原因となることが多いです。
片頭痛
片頭痛とは一側に起こることが多く、また女性に多く見られます。 頭蓋内と外の血管が収縮した後、拡張することで発生すると言われています。 視覚障害などの前駆症状があった後に起こる古典的片頭痛と前駆症状のない普通型片頭痛があります。
群発性頭痛
群発性頭痛は男性に多く、数週間から数か月にわたり頭痛発作があります。 発作頻度は1日に1回以上あり、2時間以内に消退します。発生部位はいつも同側で痛みは激しく、眼球鼓膜の充血・流涙鼻開など伴うことが多いです。
側頭動脈炎
まれなものですが、55歳以上の女性に多く、視力障害が約半数に認められます。
副鼻腔炎
副鼻腔の痛みと関連して起こります。
緑内障
心気性またはうつ病患者もしばしば頭痛を訴えることがあります。
めまい
浮動性めまい
症 状
体がふわふわする、まっすぐに歩けない、姿勢が保てない、動揺感などがあります。浮動性めまいに伴う症状として、頭痛、顔面や手足のしびれ、運動麻痺などがあります。
特 徴
急に症状が現れふわふわと揺れる感じや頭痛、しびれ、麻痺などの症状を伴うことがあります。
原 因
脳の病気によっておこることが多いです。
回転性めまい
症 状
自分自身がぐるぐる回っているような感じ、周囲がぐるぐる回っているような感じです。 めまいに伴う症状として、耳が聞こえずらい(難聴)、耳がつまったような感じ(耳閉感)耳鳴り(耳鳴)があります。
特 徴
突然ぐるぐるとしためまいが数時間続き、吐き気や嘔吐を伴い、耳が聞こえづらいなどの症状が伴うこともあります。
原 因
頭蓋内疾患では、小脳梗塞、脳幹梗塞、小脳出血、脳幹出血など脳の病気でも回転性めまいが起こることがあります。 頭蓋内疾患以外では、良性発作性頭位めまい、メニエール病、前庭神経炎などにより回転性めまいが起こります。
非回転性めまい
症 状
立ち上がるとクラクラする、目の前が暗くなる、気を失うなどがあります。
特 徴
立ちくらみは、血圧の変動等に関係する場合が多いです。
原 因
貧血や起立性低血圧などが関係しています。