背骨は、主に脊椎と呼ばれる骨と、脊椎の間にある椎間板から構成されています。その脊椎に保護されるように覆われているのが「脊髄」です。脊髄は、脳から連なる神経が太い束になったもので、「神経根」と呼ばれる細い神経が各椎体の間から分岐して、「末梢神経」として手足に分布しています。
一概には言えませんが、脳の障害であれば、頭部顔面から四肢に至るまで何らかの症状が出る可能性がありますが、頚椎レベルの脊髄で障害があれば、頚部から上下肢(両手両足)、胸椎腰椎レベルの脊髄で障害があれば、主に下肢(両足)に症状が出現します。
症状
脊椎脊髄の病気の多くは、高齢化に伴い脊椎や椎間板などに変性が生じることで、脊髄や神経根が圧迫されて次のような症状が出現します。
- 手足の痛みやしびれ
- 手足の力が入りにくい脱力感
- うまく手が動かない(字を書きづらい、箸をうまく使えない、ボタンをかけにくい)
- うまく歩けない(ふらふらする、膝がガクッとする、階段でふらつく、休み休みでないと歩けない)
- 尿が出にくい、便秘が多い
原因は脊椎や椎間板などの変性以外にも、先天的な病気、脊髄の血管が障害される病気、脊髄の腫瘍、外傷などもあります。
手足がしびれる、力が入りにくい、歩きにくいなどといった症状は、脳の病気でも起こるので、受診される方の多くが脳の病気を最も心配されています。「脳神経外科」というと脳の病気だけを治療する科だと思われがちですが、当院は脳だけではなく、診察やレントゲン、MRI及びCTなどを含めた詳細な検査を行なうことによって、脳以外の脊髄~末梢神経に原因がないか診断及び治療を行っています。
疾患
何らかの原因で神経が圧迫されたりすることで症状が出現します。
加齢に伴うゆっくりとした変性が多く、例えば、脊髄を取り囲む脊椎の角がとがるように変形したり(骨棘)(こつきょく)、椎間板の高さが失われて後方へ出っぱったり(ヘルニア)、脊椎がずれないようにつなぐバンドの役割を果たしている靭帯が分厚くなったりして、脊髄や神経根の通り道をふさぐようなると、神経が障害されて症状が出現します。
その他、腫瘍による圧迫や、外傷による脊椎の骨折によって圧迫されることもあります。脊髄の血管の病気であれば、出血して溜まった血液(血腫)による圧迫だけでなく、脊髄の血流が悪くなって(血流不全)症状が出現することもあります。
部位別にみると、頭蓋頚椎移行部(頭と首の間)、頚椎、胸椎、腰椎、末梢神経に分類され、各部位で起こりやすい病気があり、その病気の場所によって症状は異なります。
治療方針
原因が見つかった場合には、ご本人の意向を確認し相談しながら治療を考えていきます。
手術治療を考慮することもありますが、脊髄や末梢神経の病気の場合、緊急で手術を行わなくてはならない疾患はどちらかというと多くはありません。
まずは手術ではなく保存的治療にて、いかに症状をやわらげて日常生活の支障を減らすかを考えて診療にあたっております。投薬療法からはじまり、頚椎カラーや腰椎コルセットなどで適切な姿勢を保持したり病変部への負担を減らしたり、または体操やストレッチなどで症状が軽減することも多く見られます。
しかし、ある程度保存的治療を行なっても改善がみられない強い症状の場合は、手術治療も考慮します。同じ疾患であっても、症状の程度は様々です。早く治したい、時間をかけても手術以外の方法で治したいなど、受診される方の考え方は異なりますし、生活スタイルも異なると思います。それぞれの方のご意向に基づいて、最もふさわしい治療法を選択していくようにしています。
主な疾患
- 変形性頚椎症
- 変形性腰椎症
- 後縦靭帯骨化症
- 脊髄血管障害(動静脈奇形、脊髄硬膜動静脈瘻など)
- 脊髄空洞症
- 脊髄腫瘍
- 外傷
- 末梢神経障害(手根管症候群、肘部管症候群、足根管症候群など)
変形性頚椎症
頚椎内部を走行している脊髄や神経根が圧迫され症状を来たす疾患です。
加齢などにより脊椎の角が尖るように変形したり(骨棘)、椎間板の高さが失われて後方へ出っぱったり(ヘルニア)、脊椎をつなぐ靭帯が分厚くなったりして、「脊髄」や脊髄から分岐した「神経根」の通り道がふさがれることがあります。「脊髄」が圧迫されると「頚椎症性脊髄症」といい、「神経根」が圧迫されると「頚椎症性神経根症」といいます。脊髄と神経根は密接しているので、両方の要素を含む方も多くいます。
症状は、手足のしびれや手の細かい動作がしづらい(字を書くのが以前よりヘタになった、箸をうまく使えない、ペットボトルが開けにくい、ボタンをかけにくい)、うまく歩けない(ふらふらする、膝がガクッとする、階段でふらつく)、尿が出にくいなどです。頭を後ろにして首をそらすとしびれや痛みの症状が増悪することがあります。
治療
保存的治療で症状の改善が得られない場合は、手術による外科的治療があります。脊髄や神経根の圧迫が、前方(腹側)からが強いが、後方(背中側)からが強いか、または障害されている椎間の数で、前方、後方どちらから手術を行うかが変わってきます。
前方から行う手術は、主に前方除圧固定術といいます。当院では顕微鏡下に行っています。椎体間の椎間板を前方から摘出し、椎体が変形してとがった部分を削って、その摘出した椎間板があったところにケージと呼ばれるインプラントを挿入して上下の椎体を固定する手術法です。
後方から行う手術は、主に椎弓形成術といいます。こちらも顕微鏡下に行います。うつ伏せで首の後ろの真ん中を縦に切開し、椎体の後方部分にあたる椎弓と呼ばれる部位を左右に開くように一部を削ることで脊髄の圧迫を解除します。開いた椎弓にスペーサーと呼ばれるインプラントをあてがい、脊髄の通り道である脊柱管を広くします。
変形性腰椎症
腰椎内部を走行している神経が圧迫され、主に腰痛や下肢痛、下肢のしびれ、脱力、及び歩行障害などの症状を来たす疾患です。加齢などにより脊椎の角が尖るように変形したり(骨棘)、椎間板の高さが失われて後方へ出っぱったり(ヘルニア)、脊椎をつなぐ靭帯が分厚くなったりして、神経が圧迫されて症状が出現します。狭窄だけでなく、腰椎の椎体が前後にずれたりして不安定な場合でも症状が出現します。主に脊柱管自体が骨棘や靭帯の肥厚などで狭くなって症状を呈する場合を腰部脊柱管狭窄症といい、椎間板ヘルニアで神経が圧迫されて症状が出現することを、特に腰椎椎間板ヘルニアといいます。
腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状
お尻から下肢後面(ももの裏やふくらはぎ)にかけてのしびれや痛みで、いわゆる坐骨神経痛といいます。特に圧迫されている神経がある場合は、その神経の領域に応じて、下肢の他の部分にもしびれや痛みが生じることもありますし、尿が出にくい、便秘しやすいなどの膀胱直腸障害が生じます。歩いたり立ったりすると下肢がしびれたり痛くなったりしますが休憩すると症状が和らいだり、腰を前に屈めると症状が楽になるのも特徴的です。
腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な症状
腰部脊柱管狭窄症と症状が出る部位は似ていることもありますが、典型的なのは障害されている神経の支配領域に一致してしびれや痛み、筋力低下などが出現します。腰部脊柱管狭窄症とは異なり、腰を前に屈めると症状が増悪することがあります。
治療
保存的治療で症状の改善が得られない場合は、手術による外科的治療があります。当院では顕微鏡下に行っています。手術は後方(背中側)から行う椎弓切除術と呼ばれる方法が一般的で、椎弓の一部分を削って肥厚した靭帯やヘルニアなどを取り除き、神経の圧迫を解除します。腰椎の不安定性が強い場合などは、椎間板を摘出してケージと呼ばれるインプラントを挿入し、上下の椎体にスクリューを挿入して固定しますが、ナビゲーションを使用することで侵襲をなるべく減らして手術を行います。
診察
月・金曜日の午前中、または第3土曜の外来を受診してください。
都合により変更する場合もありますので、外来スケジュールで仙北谷伸朗医師をご確認ください。
また、初診の方のみ予約できます→こちら
脊椎脊髄ドック
脊椎脊髄ドックも行っています。詳しくはこちら