血栓溶解療法(t-PA治療)について
動脈がつまると、脳の神経は時間が経てば経つほどにどんどん傷んでしまい、ついには神経細胞が死んでしまい(壊死)元に戻らなくなります。また、血流が低下し、時間が経つにつれ、壊死の範囲は広がっていきます。
壊死巣の周囲には血流が再開するとまた元に戻る部分があります。そこで、脳の細胞が死んでしまう前に血管を詰めている血栓(血の固まり)を溶かし、血流を再開することで脳の働きを取り戻そうというのが、血栓溶解療法です。動脈が詰まって間もないうちに、血液の流れを回復させれば、症状も軽く済みます。ただし、壊死巣に血栓を溶かす薬を使って血の流れを回復させてやると、壊死巣に出血を起こす危険性も高いので(出血性梗塞)、この治療の適用には注意を必要とします。また、患者さんに投与できるかどうかについては、いくつかの前提条件があります。
ある臨床試験の結果、脳の太い動脈に急性脳梗塞が起こった患者さんの場合、この薬によって脳内の影響を受けた部分への血流が回復できる割合は33%であることがわかりました。
血栓回収療法について
血栓溶解療法による治療が患者さんに適さない、または効果がなかった場合、血栓回収療法を検討します。ステントという細いワイヤーの先端に金属製の小さな網目状の筒が取り付けられた治療機器を使い、血栓の回収を行います。
訓練を受けた医師がマイクロカテーテルと呼ばれる細い管を血管の中に通して脳内の血栓が詰まった部位まで到達させます。
その後、ステントをマイクロカテーテルの中を通して血管の中に展開し血栓を捕らえて体外へと除去します。血管の中から血栓を取り除くことで脳への血液の流れを回復させます。
図1. ステントを大腿動脈から脳内の塞がった血管まで送る。
図2. ステントを拡張し、血栓を捕らえる。
図3. ステントと血栓がカテーテルの中に引きこまれ、体外へと除去される。